天平の疫病大流行
735年〜737年にかけて発生した天然痘ウイルスの大流行。
今まさに猛威を奮っているコロナウイルスのニュースを見るたび
天平の疫病大流行を思い出さずにはいられない。
感染症のニュースを見て即座に1285年前の出来事が
頭の引き出しからいとも簡単に出てきたのは
私が常日頃から感染症に詳しい感染症フリーク、、、なわけではない。
私は東大寺が好きなのだ。
東大寺を建立した聖武天皇が好きなのだ。
その理由のひとつとされているのが天然痘の大流行であり
のちに天平の疫病大流行と呼ばれるこわいこわい出来事である。
九州地方を発端に蔓延した天然痘は
当時の首都である平城京でも猛威を奮い
当時の日本の人口の25〜35%にあたる人々が亡くなった。
それだけではない。
聖武天皇は父親を早くに亡くし、母親とは大人になるまで会えず。
自分の子供は乳飲み子のうちに亡くなり
天然痘の流行で朝廷の重鎮も次々と亡くし
民衆は飢饉に遭い、反乱するものも出てきたり。
おまけに自分は基本的に病弱。
この負のループを断ち切るため
藁にも縋る思いで行き着いたのが
仏教であり、大仏なのである。
東大寺の大仏様"毘盧遮那仏"はサンスクリット語で
"太陽や光"という意味にあたるそうだ。
きっと聖武天皇は目に見えない感染症という恐怖や
変えることのできない自分の辛く悲しい運命
そんな真っ暗闇の中に
光となる心の拠り所を
大きな大きな大仏を
つくったのだろう。
そして聖武天皇ははじめて生前譲位をした人ともいわれている。
現代日本もちょうど一年前、天皇が生前譲位をしたばかりだ。
そんなこともあり、コロナウイルスのニュースを見れば
天平の疫病大流行が思い浮かび
聖武天皇や東大寺に思いを馳せるのである。